娘ががんになりまして【2日目】

7月12日 2日目

さすがに仕事をする気が起きず、有給取って会社を休んだ。
病院の面会時間が13時からと決まっているので、午前中に自分でできることをやる。

娘の病気のことをどこまでの人に知らせるか悩んだが、会社を休みがちになるだろうから報告しようと思い、有給を取ったのに社長に会いに会社へ。
社長室に入り「娘が脳腫瘍になりました。会社を休むことが多くなる。最悪、会社辞めます」というのを丁寧にボロボロ泣き崩れながら報告。
昨日の今日で自分の中で整理がついている筈もなく、自分の口から「娘が脳腫瘍」と言った時点で感情のコントロールが効かなくなった。
社長も子を持つ父なので理解を示してくれて、今回の件で休む場合は有給休暇ではなく特別休暇扱いでいいとのことになった。

涙も乾かぬうちに今度は保育園へ向かう。保育園へは妻が報告してくれて、預けていた荷物を引き取る為だ。
保育士さんが娘のことを心配してくれて、病気が治ったらまた園のみんなと遊びましょうと言ってくださり、また泣きそうになる。
保育士さんの歩行のフラつきの指摘があって病気を発見できましたと感謝を伝える。

まだ時間があるので、入院生活を少しでも楽しく過ごせるようにとiPadを購入。
我が家の教育方針的に今までiPhoneなどをあまり触らせてきませんでしたが、娘の為に購入を決意。
一旦我が家に帰り、娘でも出来そうなアプリやAmazonプライムでアンパンマンとしまじろうを観られるように設定。

病院へ向かう一人の車内。昨日は暗くて分からなかった病院への道程は平坦なもので、これと言って道しるべがないので覚えるのに時間が掛かりそう。

病院に着くと昨夜と違って多くの人で混み合っている所を掻き分けて、面会申し込み用紙に記入して病棟へ向かう。
昨日は救急と妻の送迎だけだったので病室などはあまり見る時間がなかったのですが、同じ病室・同じフロアに子供達が何人かいる。
娘が最年少ということもあって、みんなに可愛がられていた。
年長で11歳、年少で3歳と既に頑張っている子供達を見て再び涙が込み上げてくるが、なんとか堪える。
そもそも自分が今まで知らなかっただけで、小児がんは稀ではないことを思い知らされた。

病院内でも保育園と同じような授業があったようで年が近い3歳の子と仲良くなっていた。
3歳の子のお母さんも付き添い入院をしているようで、話を聞くと既に3ヶ月程入院しているとのこと。
こんなこと言っちゃいけないけど、似た境遇の人がいてちょっと安心した。
「私達もこれからその戦いに挑む者です」と勝手に戦友意識を持ってしまった。

病院に泊まるのが初めてだった妻に昨夜のことを聞いてみると「娘は寝られたみたいだけど、私は全く寝られなかった」
詳しく聞くと、脳腫瘍という現実をまだ受け止めきれないことや病室が明るくて寒くて寝られないとのこと。
病院ならではなのか、夜は巡回用に真っ暗にはできないようでそこそこの明るさが寝る時にもあるらしい。
温度に関してはエアコンを夜でも24℃の設定になっていてヒートテックがないと凍えると言っていた。
今日は私が付き添い入院なので、寝られるか不安になる。

娘の脳腫瘍(髄芽腫)の初期症状だと頻繁に嘔吐をするそうなのだが、娘は相変わらず元気で歩いたり2語ぐらい話せるし本当に脳腫瘍なのか疑いたくなる。
家とは違う環境で大丈夫かなと思ったが、想像より遥かに病院に適応していて楽しそうにしている。
病院食だけは味の好みが違うようで、食べるのを拒むおかずもあった。
iPadは非常に喜んでいて、普段はあまり観せないアンパンマンを食い入るように観てくれた。

夜になり娘が寝付き、自分も付き添い用の折りたたみセミシングルぐらいの大きさの簡易ベッドを準備する。
妻が言っていたように部屋は寒いし、明るくてすぐに寝られるような環境ではない。
寝られないならと思い、病気が分かってからバタバタしていて報告するのをすっかり忘れていた自分の家族や友人にも娘の現状を連絡。
普段はふざけばかりの友人達も子供を持つ父親なので、温かい言葉を掛けてくれて本当に助かった。
母と兄は看護師なので病気の大体のことを理解してくれ、後日面会に来てくれることになった。

まだ寝られなくてうだうだしてたら、同じ病室の7歳の女の子がトイレで吐いているのが聞こえる。
ベッドに戻ったと思ったら今度は「ママ、ママ」と小声で泣いている。
抗がん剤の所為なのかは分からないが、トイレとベッドを行き来している。
7歳だと親御さんの付き添い入院ができないので、一人で頑張っている。
その様子をカーテン越しに感じ取れて、心がキリキリと締め付けられるような感覚になる。
泣きそうになりながら隠れてエールを送る。

当たり前だと思っていた日々は、奇跡的な日々だったんだなと思い知らされながらこの日は就寝。

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おすね
埼玉出身埼玉在住の1990年生まれの34歳。2020年に結婚し、婿入り。好きなものは猫と深夜ラジオと無駄を減らすこと。嫌いなものはパリピと行列に並ぶこと。仕事と育児のスキマ時間で副業挑戦中。